QUESTION3.
脂質異常症の治療薬は認知症にも効果があるのですか?
Answer
脂質異常症の治療薬がアルツハイマー型認知症の予防や抑制にも有効であるとする研究成果を福井大医学部の濱野忠則講師が発表しています。論文はオランダの国際科学誌「ニューバイオロジー・オブ・エイジング」電子版に掲載されています。
認知症患者は全国に200万人いるとされ、中でもアルツハイマー型はその5~7割を占めています。治療は症状を軽くする薬物投与が主で、根本的な治療法は確立されていません。従来、脂質異常症の治療で一般的な薬「スタチン」を処方された患者に、発症が少ないとの研究はありましたが、十分知られていなく、仕組みも分かっていませんでした。
濱野講師は、脳の神経細胞が死ぬ「神経原線維変化」と、その原因となる「タウタンパク」の変質に着目しました。アルツハイマー型の特徴のうち、これまであまり注目されてこなかったもので、2007年から研究を始めました。実験では脂質異常症の治療薬のスタチンの一種「ピタバスタチン」の投与前後を比較しました。投薬後はタウタンパクの変質をもたらす特定の酵素の活性が、大きく減少していることを確認しました。その結果として、細胞内の変質したタウタンパクが減少することも確かめました。
濱野講師は「脂質異常症の治療薬は既に安全性が確認された薬であり、3~5年以内の適用拡大を目指したい」と話しています。